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東京地方裁判所 平成4年(特わ)247号 判決

本店所在地

東京都江東区白河二丁目三番九号

有限会社春富士商事

(右代表者代表取締役 春山敏子)

国籍

韓国

住居

東京都江東区白河二丁目三番九号

会社役員

春山洋次郎こと 張斗煥

一九二八年一〇月二八日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

検察官 蝦名俊晴 弁護人 中田明 各出席

主文

被告人有限会社春富士商事を罰金一二〇〇万円に、被告人張斗煥を懲役一〇月にそれぞれ処する。

被告人張斗煥に対しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となる事実)

被告会社有限会社春富士商事は、東京都江東区白河二丁目三番九号に本店を置き、いわゆるパチスロ店等の経営を目的とする資本金五〇〇万円の有限会社であり、被告人春山洋次郎こと張斗煥は、同会社の取締役であって、その実質的な経営者としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人張は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和六三年四月一日から平成元年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が七六三五万四七四円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年五月二四日、東京都江東区猿江二丁目一六番一二号の所轄江東西税務署において、同税務署長に対し、その欠損金額が五四四万六八五九円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成四年押第五二一号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における法人税額三一一〇万七〇〇〇円(別紙2の脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六六四八万八二二三円(別紙3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年五月二四日、前記江東西税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における法人税額二五七一万五二〇〇円(別紙4の脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人張及び被告会社代表者春山敏子の当公判廷における各供述

一  被告人張の検察官に対する供述調書(二通)

一  春山宗源こと張宗源の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、役員報酬調査書、給料手当調査書、賞与手当調査書、受取利息調査書、事業税認定損調査書、損金算入役員賞与調査書

一  検察事務官作成の「江東西税務署の所在地について」と題する捜査報告書

一  登記官作成の履歴事項全部証明書

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の申告欠損金調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成四年押第五二一号の1)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の欠損金の当期控除額調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)

(法令の適用)

被告会社の判示各行為は、法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するので、情状によりそれぞれ同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪について定めた罰金を合算し、その範囲内で被告会社を罰金一二〇〇万円に処し、被告人張の判示各行為は、法人税法一五九条一項に該当するので、いずれについても所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情が重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、その刑期の範囲内で同被告人を懲役一〇月に処し、情状により刑法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

(量刑の理由)

本件はいわゆるパチスロ店等の経営を目的とする会社における法人税脱税事案であるが、二年分合計で五六〇〇万円という脱税額は必ずしも小さくなく、ほ脱率も各年度とも一〇〇パーセントであり、犯行の動機も、全く個人的な事由によるもので格別酌むところなく、脱税の方法は、日々の店の売上を除外して所得を隠匿したというもので、計画的で巧妙であって、これら事情に照らすと、犯情はよくなく、被告会社及び被告人張の刑事責任を軽視することはできない。

しかし一方、被告会社では、本件起訴の対象となっている年度のみならずそれ以前の年度の法人税、地方税について、修正申告した上その本税及び附加税等を全て納めていることや、被告人張も本件脱税については深い反省の態度を示し、一家挙げて二度と同じことを繰り返さないように努める旨決意を述べていることなど、酌量すべき事情がある。

そこで、以上の各事情及びその他諸般の情状を考慮して、主文のとおり量刑する。

(求刑 被告会社・一五〇〇万円 被告人張・懲役一〇月)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 松浦繁)

別紙1

修正損益計算書

〈省略〉

別紙2

脱税額計算書

〈省略〉

別紙3

修正損益計算書

〈省略〉

別紙4

脱税額計算書

〈省略〉

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